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アメリカのNPO~設立と税金~

アメリカのNPO法人は、一定条件を満たすと税制の優遇を受けることができます。アメリカでNPO法人を設立し、税制優遇を受けるにはどのような手続きが必要なのでしょうか。

法人設立から税制優遇を受けるまでの手続きには、大きく分けて以下の3つのステップがあり、州と連邦で手続機関や方法が異なります

NPO法人を登録する州により、州の手続方法や優遇内容が異なります。本コラムでは、ニューヨーク州を例に解説いたします。

1.アメリカのNPO法人の概要

アメリカのNPO法人とは、Non Profit Organizationのことで、日本と同様、営利目的をもたない団体です。

法人化したNPOは、内国歳入庁(Internal Revenue Service:以後IRS)に非課税適格法人資格の申請をし、条件をクリアして認定されることで、税制の優遇を受けられるようになります。アメリカでは、日本のようにNPO法人設立と同時に税制の優遇措置を自動的に享受することができません。法人設立と税制優遇は切り離されたものであり、それぞれで手続きを行う必要があります。

アメリカには様々な目的をもった数多くの非課税適格法人資格を持つ非営利団体が存在しますが、その中で多数を占めるのが、連邦税法501条c項3条(以後501(c)(3))に分類される、宗教・慈善・科学・公共の安全・文学・教育・アマチュアスポーツ振興・児童及び動物虐待防止の目的をもった団体です。アメリカのNPO法人というと、一般的にこの501(c)(3)に分類される法人を指します。

税制優遇内容や申請方法は、連邦税法上で分類されたNPO法人の種類により異なります。ここではアメリカのNPO法人の多数を占める、501(c)(3)について解説します。

2.NPO法人に対する税制優遇措置

501(c)(3)に認定されたNPO法人は、どのような税制のメリットがあるのでしょうか。

以下3つの優遇措置を受けることができます。

上記①②は、NPO法人の税金に直接インパクトがあるものですが、③は当該NPO法人に寄付をする者の個人所得税の優遇措置となります。ここでは①と②について、内容を解説いたします。

① 本来事業の所得にかかる法人税非課税

設立したNPO法人の本来の目的事業による収入は、営利活動に伴う収入であっても、
連邦税法上、法人税が非課税となります

本来の目的事業に関連のない事業による収入は、課税対象となります。

② 地方税(州税・市税)の課税免除

IRSより501(c)(3)の非課税適格法人の認定を受けた場合、州や市の管轄機関へ申請する

ことにより、州の法人税や消費税、市の固定資産税の税制優遇措置を受けることがで

きます。

ニューヨーク州ニューヨーク市の場合、以下の税金に非課税措置があります。

3.NPO法人設立手順

ここでは、冒頭の「①NPO法人の設立」について解説します。NPO法人の設立手続きは、州の管轄機関にて登録手続きを行います。NPO法人設立に関連する必要な手続きは、以下の2つです。

1) 州の管轄機関でのNPO法人登録手続き

州ごとに異なる場合がありますが、基本的には、Article of Incorporation(定款)やその他関連書類を州の管轄機関へ提出して承認されると、登録手続きが完了し、正式にNPO法人となります。

各州ごとにArticle of Incorporationの参考フォームが提供されていますが、必要事項を全て満たしていれば、必ずしもフォームを使用する必要がない州もあります。

ニューヨーク州で登記手続きをする場合は、ニューヨーク州より以下の申請フォームが提供されており、申請費用75ドルとともに提出します。

Article of Incoporationには、法人名称、事業目的、所在地、メンバーなどNPO法人の詳細について記載します。IRSへ非課税適格資格申請時にも提出する書類となる場合があるため、州が求める情報とともにIRSの要件(必要な文言)も満たすよう作成することが重要になります。

法人名については、既に使用されている名称を使うことができません。既に登録があるか確認できるツールも各州にて提供されています。

2)EIN番号取得手続き

州の管轄機関にてNPO法人登録手続きが完了後、次にNPO法人のEIN(Employer Identification Number=連邦雇用主証明番号)をIRSに申請をして取得します。

EIN番号は、会社の身分証明となるIDで、法人として活動する際に、従業員を雇用していない場合でも取得が必要となります。連邦税法上の課税免除を受ける際にも必要な番号です。IRSのホームページや電話にて、簡単に無料で取得することができます。

EINの詳しい内容、取得方法は、こちらにて解説しています。

4.税制優遇措置の申請

次に冒頭の「②非課税適格法人資格の申請」について解説します。

NPO法人設立が完了しても、税制の優遇措置は自動的に受けることができません。IRSより、501(c)(3)非課税適格法人として認定される必要があります。州税の非課税措置については、IRSに認定された後に州の管轄機関へ申請を行います。

1) IRSへ連邦税法上の課税免除申請を行い、501(c)(3)非課税適格法人の認定を受ける。

Form1023 にて、IRSへ非課税適格法人の申請をします。現行のForm1023は28ページに渡ります。NPO法人の資産や収益規模によっては簡易版のForm1023EZにて電子申請を行うことができ、ボリュームが大きく変わるとともに申請費用も異なります。

IRSに非課税適格資格を認定されることが、NPO法人設立及び課税免除手続きの中で、一番大変で重要な手続きとなります。

2) 州や市の管轄局へ地方税(州税・市税)の課税免除申請をする。

IRSより非課税適格法人資格を得ると、NPO法人の本来の目的事業関連の収入に対する州税や市税などの、地方税の課税免除も受けることができます。手続きは、州や市の管轄機関に申請をします。課税免除を受けられる地方税は、州や市により異なります。

ニューヨーク州、ニューヨーク市では、以下の税金の課税免除を受けられます。

5.非課税適格資格の維持

次に冒頭の「③非課税適格法人資格の維持」について解説いたします。501(c)(3)の非課税適格法人資格の認定を受けても、連邦や州より課される義務を果たし、非課税資格の維持をする必要があります。

連邦や州より以下が義務付けられています。

1) IRS(連邦)に対する義務

毎年、IRSに対してForm990と呼ばれるアニュアルレポート(年次報告書)を提出し、NPO法人の財務情報を一般に開示する義務があります。資産や収入額により、フォームの種類が変わり、規模が小さい場合には、簡易版であるForm990-EZForm990-Nを使用できます。その他の義務には、役員会の議事録の作成、関連・非関連事業にわけた会計帳簿の記録などがあります。

Form990の提出期限は、当該NPO法人会計年度終了後、5か月後の15日となっています。

12月31日決算の法人の場合、5月15日となります。Form990の提出にかかる費用はありません。

2) 州に対する義務

連邦以外にも、州に対する義務もあります。

ニューヨーク州では、CHAR500と呼ばれる年次報告書の提出が義務付けられています。

Form990Onlineにて電子申請ができます。Form990とともに提出することができます。

CHAR500の申請費用は、NPO法人の登録上のカテゴリ及び財務状況により変わります。

($10~$1500)

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NPO法人設立を検討されていたり、ご意見ご相談がありましたら、お気軽にこちらよりご相談ください。

監修者

小林 賢介

早稲田大学政治経済学部を卒業後、 有限責任監査法人トーマツのグローバルサービスグループ部門に入所。 2015年8月よりDeloitte NYに駐在。 その後、ニューヨークにて UNIVIS AMERICA LLC(Univis US)を立ち上げ、同所長に就任。