Individual Tax

グリーンカード(永住権)・米国市民権保持者の税務を世界一わかりやすく解説

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米国市民権又はグリーンカードを保有している方は大学への入学要件、国からの社会保障、米国における就職、税関等様々な場面においてアメリカ人と同等の扱いを受けることができるため、その取得を望んている方は多いのではないでしょうか。一方、税務面においてはアメリカ人と同等の扱いを受けるため、アメリカ人であるが故に果たさなければならない義務も生じうることはご存知でしょうか。

■世界中どこに住んでいてもアメリカで確定申告が必要!

グリーンカードを保有している方が半年に1度アメリカに入国しなければ米国への再入国が認められない可能性があるということはある程度周知されていると思います。しかし、米国市民権又はグリーンカードを保有している限り世界中のどこに住んでいようと、毎年必ずアメリカでタックスリターン(確定申告)を行わなければならないことは知らない人も多いのではないでしょうか。

日本の税制では、海外に移住した場合、移住先の国で居住者として確定申告をすれば日本において確定申告をする必要はありません。一方、アメリカの税制ではアメリカ人である限り全世界どこにいてもアメリカにおいて毎年確定申告を行う必要があり、米国市民権又はグリーンカード保有者もその対象となります。申告漏れの場合はペナルティーが発生する可能性もありますので、米国市民権又はグリーンカード保有者の方は忘れずに毎年確定申告を行いましょう。

■米国外金融資産の申告義務

米国市民権又はグリーンカード保有者は、米国国外の銀行口座や証券口座などに金融資産をを保有し、その金額が一定額を超過する場合、FBAR(Foreign Bank and Financial Accounts)及びForm8938でその金額等を申告することが義務付けられています。FBARとForm8938の内容は類似していますが、申告が必要な海外金融資産の最低金額に差異があります。また、FBARはFinCen(フィンセン)と呼ばれる米国財務省の金融犯罪執行機関、Form8938はIRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)が管轄しているため、それぞれの別の担当当局に提出します。

■世にも恐ろしいFBAR(国外金融資産報告)ペナルティー

米国外に金融資産(預金、株式、保険等)が$10,000以上ある方は、タックスリターンと合わせてアメリカ財務省に対してFBARと呼ばれる金融資産報告をしなければなりません。こちらは報告義務であり、資産を保有していること自体で課税を受けることはありませんが、恐ろしいのは申告をしなかったときのペナルティーです。通常、税務申告にかかるペナルティーは未納税金額に対して一定の割合で算出されます。しかし、このFBARに関しては未納税額は存在せず、最大で資産額の50%がペナルティーとして徴収されます。つまり、仮に10億円の資産を国外に保有していてそれを故意に申告しなかった場合、5億円もの罰金が徴収される可能性があるということで、極めて恐ろしい制度と言えるでしょう。

一方、Form8938は、米国外に金融資産が12月末時点で$200,000以上又は期中にその残高が一度でも$300,000を超えた場合に報告義務が生じます(夫婦合算の場合はその2倍)。報告を怠った場合、$10,000から$50,000のペナルティーが発生する可能性があります。

質問

Q.アメリカで生まれ米国市民権を持っていますが、日本で育ったためタックスリターンの義務を知りませんでした。社会人になってから既に何年も経っており、その間一度もタックスリターンもFBAR報告も行っておりません。どうしたら良いでしょう?

この質問者の方のように、タックスリターンの義務を今まで知らなかったという方は珍しくありません。原則として、納税については時効が存在しないため過去に遡り収入が発生した年から全てのタックスリターンを行う必要があります。また、日本で数年間働いていると金融資産を$10,000以上保有している可能性は高く、FBARの申告漏れによるペナルティーが課されるリスクもございます。但し、世界中にそのような状況に陥ってしまう人は多数存在するため、救済措置として” Streamlined Foreign Offshore Procedures”(“Streamlined Procedures”)という制度が存在します。

■Streamlined Procedures – タックスリターン義務を知らなかった人を救う救済制度

国は税金の徴収漏れが起きないよう細心の注意を払って複雑な税制を整えておりますが、アメリカ合衆国も冷酷非情というわけではありません。そのため、故意に脱税、資産隠蔽をしようとする者に対しては厳しいペナルティーを科しておりますが、知識を持ち合わせていないだけの善意の市民に対しては多少の寛容な制度を敷いております。そのひとつが、Streamlined Proceduresです。

Streamlined Proceduresとは、簡潔に説明すると、直近3年分(申告期限がすぎているもの)のタックスリターン及び直近6年分のFBARの申告を同時に行うことで、それ以前のタックスリターンの申告並びに、タックスリターン及びFBARのペナルティーの免除を受けられる制度です。もちろん、直近3年分のタックスリターンを作成した結果、納税が発生する場合には当該納税金額及びそれに対する利息を支払う必要はありますが、特にFBARのペナルティーを正式に免れることができるという点において非常に納税者を安心させてくれる制度です。

■Streamlined Proceduresの適用条件

  1. 申告漏れが故意ではないこと あくまでもタックスリターン又は外国資産の報告義務を知らなかった人を救済する措置であるため、義務を知っていたにも拘わらず申告をしなかった者は対象外となります。自己申告にはなりますが、自分がなぜ今までタックスリターン又は外国資産報告を行っていなかったかにつき指定のフォーム(Form 14653)で説明する必要があります。

  2. IRSが調査を開始していないこと 既にIRSが何らかの理由で調査を開始していた場合には当該制度の対象外となります。タックスリターンは行っていたが外国資産の報告を行わず、IRSの調査が入っている場合には当該制度の適用はできません。また、タックスリターンの有無に拘わらず、何らかの理由でIRSから既に調査を受けている場合も同様です。

  3. 過去のタックスリターンで既に課されているペナルティーは免除対象外 こちらは過去にタックスリターンを提出したことがある方が対象ですが、そのタックスリターンの結果、既にLate Filing等のペナルティーに関する通知を受けている場合には当該ペナルティーは免除されません。但し、Streamlined Proceduresを利用できなくなる(外国資産報告の免除を受けられなくなる)というわけではありません。

  4. 納税者番号を有していること Social Security Number(社会保障番号、”SSN”)又はSSNを取得できない人が取得する納税のための番号であるIndividual Tax Identification Number(個人用納税者番号、”ITIN”)を保有している人が当該制度の対象となります。但し、SSNを取得できない人でITINも保有していない人は、Streamlined Proceduresによる申告と合わせてITINの申請を行うことができます。

■申告対象の所得とは何か

米国市民権又はグリーンカード保有者は、税務上常に居住者として扱われ、居住地に関わらず、全世界所得が申告対象となります。つまり、1年を通して日本で働いており、日本での源泉所得のみしかなかったとしても、当該所得を米国にて申告する必要があります。但し、米国外で稼いだ全ての所得につき米国で課税されるというわけではなく、一定金額については米国の課税所得から控除することができます(次頁参照)。そのため、米国外所得が一定金額に満たない場合、実質的にはアメリカで税金を納める必要はございません。但し、納税の要否にかかわらず、タックスリターンの提出義務を免れることはできない点につき留意が必要となります。

■Foreign income exclusion及びForeign tax credit

全世界所得が申告対象ではあるものの、その全部又は一部については控除を受けることが可能です。これをForeign income tax exclusionといいます。控除できる金額はインフレーション・デフレーションが毎年反映されるため、年度ごとに異なりますが、概ね日本円で1000万円程度までの所得であれば米国における追加納税は発生致しません。当該控除額を超える分については、米国の税額と日本の税額を比較して米国の税額が上回っていれば差額の納税が必要になります。

また、日本で税金を支払っている場合には、日本での支払税額を米国の要支払税額から控除することができます。これをForeign tax creditといいます。

Foreign income tax exclusionとForeign tax creditは併用も可能ですが、単独でどちらかを適用したほうがよいか、両者を併用したほうがよいかは個別の事情により異なるため、総合的に勘案した上で有利判定を行うことになります。

■Streamlined ProceduresならUnivisにお任せを!

Univis Americaではこれまで数多くのお客様のStreamlined Proceduresをお手伝いしております。特殊な制度で複雑な手続きを伴いますが、お客様にとって最適な申告となるよう親身に対応致します。ご不明点、ご不安な点がございましたらお気軽に弊社までお問合せ下さい。

監修者

小林 賢介

早稲田大学政治経済学部を卒業後、 有限責任監査法人トーマツのグローバルサービスグループ部門に入所。 2015年8月よりDeloitte NYに駐在。 その後、ニューヨークにて UNIVIS AMERICA LLC(Univis US)を立ち上げ、同所長に就任。