なぜデラウェア州が選ばれるのか? ― C-Corp設立時のフランチャイズ税とPar Value設計の考え方 ―

米国で会社設立を検討する際、なぜ多くの企業がデラウェア州を候補として選ぶのでしょうか。
そして、将来IPOを目指す会社と、日本企業の100%子会社、さらにはIPOを想定しないExit志向の企業では、それぞれどのような設計が合理的なのでしょうか。
本コラムでは、デラウェア州が選ばれる理由と、フランチャイズ税・Par Value設計の実務的な考え方を整理します。

1. なぜデラウェア州が人気なのか?

デラウェア州は、米国に拠点を置く企業の多くが本店所在地として選んでいる州です。その理由は主に次の4点です。

(1) 会社法が洗練されている

デラウェア州会社法(DGCL)は、企業実務に非常に適しており、改正も頻繁に行われています。
また、膨大な判例の蓄積があるため、様々な状況において裁判所がどのように判断するかについて豊富な先例が存在し、投資家・経営者双方にとって予測可能性が高い法体系です。

(2) 専門裁判所(Chancery Court)の存在

デラウェア州には、企業紛争専門の衡平法裁判所(Court of Chancery)があります。
陪審制ではなく、企業法に精通した裁判官が判断するため、迅速で合理的な判決が期待できます。

(3) VC・投資家の標準フォーマット

ベンチャーキャピタルの投資契約、優先株設計、ストックオプション制度などは、デラウェアC-Corpを前提に設計されていることが多いです。

(4) M&AやIPO時の信頼性

買収側や証券会社から見て、デラウェア法人は会社法が整備されているため、最も“扱いやすい”法人形態です。

結論として、米国での資金調達やExitを視野に入れるなら、デラウェアは非常に有用な選択肢といえます。

2. Franchise taxの基本構造

デラウェア州にC-corporationを設立した場合、デラウェア州で実際にビジネスを行っていなかったとしても、Franchise taxと呼ばれる税金を毎年3月1日までに納める必要があります。

Franchise taxの税額は次の2方式のうち有利な方を選択して支払うことが可能です。

  1. Authorized Shares Method(株式数ベース)
  2. Assumed Par Value Capital Method(資産ベース)

それぞれの計算方法の特徴は以下のとおりです。

Authorized Shares Method Assumed Par Value Capital Method
税額 $175(~5,000株)
$250(5,001株~10,000株)
以降10,000株毎に+ $85
最高$200,000(上場会社等の場合は$250,000)
$400~$200,000(上場会社等の場合は$250,000)
計算方法 株式数のみ 1. みなし資本の算定
総資産÷発行済株数×発行可能株数

2. 税額計算
みなし資本1,000,000ごとに$400(切り上げ計算)

※種類株を発行している場合などは計算方法が異なります

特徴 株式数が少ない場合は基本的に有利 株式数が多くて資産が小さい場合に有利

なお、LLC、LP、GPなどの会社形態の場合は、毎年6月1日までに$300を納める必要があります。

3. Par Value(額面)の考え方

Par Valueは株式の株式1株あたりの最低発行価格であり、デラウェアにおいては最低で1株0.00001から発行できます。
Par Valueを低く設定し、実質的に無意味な価格とすることで、将来的にストックオプションの付与や投資家の参画などの株式関連イベントが生じた場合に柔軟に対応することが可能になります。
ただし、Par Valueを低くしたり、No-ParにしてもFranchise taxが安くなるわけではないという点にはご注意ください。

4. ケース別:どの設計が合理的か?

ケース①:IPOを目指すスタートアップ

VC投資を想定したり、ストックオプションの発行、株式分割の可能性などを踏まえ、可能な限り柔軟な資本政策を設定しておくことが有用です。
このケースで推奨される設計は、例えば以下のとおりです。

推奨設計例

・Authorized Shares:10M〜20M
・Par Value:$0.00001など極小
・税計算:Assumed Par Value Method

ケース②:IPOは目指さないが、将来M&Aによる売却を想定する小中規模企業

IPOまでは目指さないまでも、株式譲渡等のM&AによるExitを想定する場合、IPOほど複雑な資本政策は不要と考えられます。そのため、税負担を抑えつつも買収されやすい法人形態であることが重要です。
このケースで推奨される設計は、例えば以下のとおりです。

推奨設計例

・Authorized Shares:1M〜5M程度
・Par Value:$0.0001〜$0.001
・税計算:状況に応じて選択

ケース③:日本企業の100%子会社(Exit予定なし)

日本の親会社が100%保有し、外部からのEquity投資や株式増加などの予定がなく、資本政策の柔軟性が不要な場合は税額最小化と管理の簡素化を優先することをお勧めします。
このケースで推奨される設計は、例えば以下のとおりです。

推奨設計例

・Authorized Shares:〜5,000株
・Par Value:No-Par Valueや$1など
・Authorized Shares Methodによる最低税額($175)

5. まとめ:最適解は「将来の出口戦略」で決まる

将来像 推奨設計
IPO志向 低Par × 大量株式
M&A志向(中小規模) 中程度株式 × 低Par
親会社100%子会社 少数株 × 最低税額設計

デラウェアC-Corp設計のポイントは、「今の税額」ではなく「将来の資本政策・Exit」を見据えた最適な資本設計を行っておくことです。

Univis Americaは、皆様のビジネスの米国進出を会計・税務の観点から全力でサポートいたします。
設立時の株式数や額面の設定などにご不安な点がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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監修者

吉野 真貴

早稲田大学商学部を卒業後、有限責任あずさ監査法人の金融部門に入所。2017年よりKPMG Dublinに駐在し、航空機リース会社を中心に監査・税務・アドバイザリー業務に従事。2021年よりUnivis America LLCに参画し、新規ビジネス開拓を担当。