Corporate Tax

ホームオフィス控除 in アメリカ

Home office deduction(ホームオフィス控除)とは

あまり資金がないビジネス初期段階においてオフィス費用という固定費は経営者にとって大きな支出となります。そのため、スタートアップ等、自分でビジネスを始められている方で自宅を仕事場として利用しているケースは珍しくありません。ホームオフィス控除とは、そのような自宅の一部を仕事場として利用している方にとってさらなる節税となる制度です。外部にオフィスを借りる費用を抑え、さらに自宅の賃料等の一部を経費として税務上控除できる制度ですので、ここでしっかりと内容を理解しましょう。

ホームオフィス控除の適用要件

上述のように経営者からみたらとても魅力的なホームオフィス控除。納税者の立場から魅力的ということは反対に税務当局からみると税収が下がることになる制度です。従い、誰でもこの制度を用いれるというわけではありません。魅力的である分、当局からの指摘も受けやすい項目ですので、下記要件を全て満たしていることを確認の上適用致しましょう。

 

要件①:専有利用

第一の要件としてビジネスとしての専有利用があります。自宅の一部を仕事場としている場合、その場所は仕事用としてのみ使われていなければなりません。例えば自宅の一室をオフィス専用として利用しているような場合は専有利用として認められますが、普段ダイニングテーブルとして利用している机を仕事場として使用しているような場合は専有利用とは認められません。

 

要件②:定期利用

二つ目の要件は定期利用です。ホームオフィス控除を適用するためにはその場所を定期的に利用していなければなりません。例えば、年間に1カ月だけ利用したような場合には定期的とは言えませんので、当該制度を利用することはできません。

 

要件③:主たる事業所

ホームオフィス控除を適用するためには自宅が唯一の活動拠点である必要はありませんが、“主たる事業所”である必要があります。主たる事業所であるかどうかを判断する場合には、以下の事項を考慮致します。

―自宅で行っている作業のビジネス上の重要性

―どれだけの時間をそれぞれの活動拠点で過ごしているか

―自宅以外に同様の作業を行っている拠点がないか

例えば弁護士の方で自宅以外にオフィスを借りていて、オフィスで作業する場合もあるが同様の作業を自宅でも行っているよう場合は、自宅が主たる事業所とは言えず自宅の賃料等を税務上の経費とすることはできません。一方で、飲食店や美容室を営んでいる方で、会計や経営管理のためのスペースが店舗にはなく、そのような作業を自宅の一画で行っている場合は控除の適用対象となります。

控除対象となる経費

ホームオフィスの控除の対象となる経費は自宅での仕事に関連するもののみとなります。例えば、以下のものが対象になる可能性がございます。

―Real Estate Tax

―住宅ローン金利

―盗難損失

―減価償却費

―保険

―賃料

―修理代

―セキュリティーシステム

―電気、ガス、水道代

控除額の算出方法

ホームオフィス控除の金額の算出方法としては、下記2パターンの計算方法が認められております。両方計算し、どちらか有利な方を選択することができます。

  1. Standard method
  2. Simplified method

Standard methodは、上記実際に掛かった経費を集計し、そのうちのビジネスの使用割合の分だけ控除する方法です。Real Estate Taxや減価償却費等、ビジネスと私的利用の両方にかかる経費については、一般的には使用面積割合を用いて按分致します。

 

一方Simplified methodは、実際の経費の金額に拘わらず、1 Square feet を$5 として、最高 300 square feet (= $1,500) まで控除することができる計算方法です。仕事場のスペースはそれなりに大きいが、賃料等が低くStandard methodを用いた場合に控除できる金額があまり大きくない場合にこちらの方法を用いることになります。

会社における費用処理方法

個人事業主の方は、Form 1040と呼ばれる個人タックスリターンにおいて、その添付書類であるBusiness Incomeを算出するSchedule CというFormで上記ホームオフィス控除を算出すれば問題ございません。一方で、個人事業主ではなく、S Corporation等の会社形態を用いており、個人の所得(Form 1040)から費用を控除するのではなく、会社の所得(Form 1120S等)からホームオフィスにかかる経費を控除する場合には、会社と従業員又はOwnerとしての個人の間の費用処理方法を理解する必要がございます。

会社と個人の経費の精算方法は下記2種類が考えられます。

  • 賃料として会社が個人に支払いを行う。
  • Accountable Planを利用し、個人立替経費の精算として会社が個人に支払いを行う。

上記2種類がございますが、後者のAccountable Planを利用したほうが通常有利になります。前者の賃料として支払いを行う場合、金額の設定は自由となりますが、賃料の受け取り側は受け取った金額を収入として申告する義務が生じます。つまり、会社の利益を低くして会社ベースでの税負担軽減にはなりますが、個人で税負担増が生じてしまいます。

一方で、後者のAccountable Planを利用する場合は、上記のStandard methodのように経費の明細を集計し、適切に按分する必要はございますが、立替経費の払い戻しとして受け取った金額を個人の収入として申告する必要はありません。

 

Accountable PlanとAllowance Plan

Accountable Planとは、従業員が支払った交通費や備品購入等の経費の精算方法の一つとなります。Accountable Planは、実際に掛かった金額を精算する方法です。一方でそれと対比されるのが、Allowance Planです。Allowance Planでは、実際に掛かった金額を精算するのではなく、ルールによって決められた金額を 精算致します。例えば、従業員の交通費を精算する場合、Accountable Planでは実際に掛かった金額を精算するのに対し、Allowance Planではいくら掛かろうが全員に一律で100ドル支給する、といった具合になります。

 

Allowance Planのメリットは簡便性です。支給される金額が決まっているため、いちいちレシートを提出したり、支給した金額の詳細を適切にレコードする必要はありません。一方でデメリットは、Allowance Planで支給された金額は税務上の収入として認識され個人所得の課税対象となってしまうことです。同じ交通費の支給100ドルであってもAccountable Planでは課税されませんが、Allowance Planでは課税対象となってしまうのです。

このように、税務上はAccountable Planのほうが有利となるため、Accountable Planを利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • ビジネスに関係した経費でなければならない。私的利用のための備品等を購入し、会社が負担した場合は個人の収入として課税対象となる。
  • 従業員は経費の詳細を会社に報告しなければならい。経費の内容、日付、場所、金額の証拠等の会社への報告義務がある。
  • 仮に事前に一定金額を支給されていて、実際の金額がそれよりも少なかった場合は、差額を会社に返金しなければならない。

ホームオフィス控除の解説は以上となります。本記事に対するご質問、ご意見はinfo@univis-america.com又はコメント欄にお願い致します。

監修者

小林 賢介

早稲田大学政治経済学部を卒業後、 有限責任監査法人トーマツのグローバルサービスグループ部門に入所。 2015年8月よりDeloitte NYに駐在。 その後、ニューヨークにて UNIVIS AMERICA LLC(Univis US)を立ち上げ、同所長に就任。