Accounting

はじめてのQuickBooks-主な機能の紹介


米国でビジネスを営むうえで避けて通れないのが「会計管理」です。日々の取引をいかに正確に記録し、税務申告や経営判断につなげるか-その実務を支えるツールとして、米国中小企業の圧倒的シェアを誇るのがQuickBooks(クイックブックス) です。
本コラムは2部構成のPart 1として、QuickBooksの全体像と主な機能を日系企業の視点でやさしく解説します。

1. QuickBooksとは何か

(1) QuickBooksとは

QuickBooksは、米国の会計ソフト最大手Intuit社が開発した中小企業向けのクラウド会計ソフトです。米国のスモールビジネスにおいて圧倒的なシェアを誇り、請求書の発行から経費の記録、銀行取引の自動連携、損益レポートの作成まで、日常の会計業務を一元的に管理することができます。

操作画面は視覚的でわかりやすく、会計知識がそれほど深くなくても扱いやすい設計になっているため、会計士に頼らず自社で基本的な経理を進める企業も多くあります。

(2) クラウド型とデスクトップ型

QuickBooksには大きく分けてクラウド型(QuickBooks Online)デスクトップ型(QuickBooks Desktop)の2種類があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。

比較項目 QuickBooks Online(クラウド型) QuickBooks Desktop(インストール型)
利用環境 Webブラウザ/スマホアプリから利用可 PCにインストールして利用
同時利用・共有 複数ユーザーでリアルタイム共有が可能 クラウド共有・モバイル利用は制限あり
連携機能 銀行口座の自動連係/税務書類などの自動作成 一部自動連携に制約あり
アップデート 機能が定期的に自動アップデート バージョンアップは都度対応
カスタマイズ性 標準機能中心でシンプル 高度なカスタマイズに対応

多くの企業や個人事業主にとっては、利便性・コスト面のバランスからQuickBooks Onlineを選ぶケースが主流となっています。

(3) 日系企業に選ばれる理由

米国進出を果たした日系企業の間でもQuickBooksの導入が進んでいます。その理由として、次のような点が挙げられます。

米国税制に完全対応
Form 1099、W-2など米国特有の税務様式に標準対応。連邦・州税の自動計算も搭載されており、米国税制との親和性が高い。
データの自動取込
銀行取引・クレジットカード明細・決済サービス等と自動連携し、Excel転記やCSV取込の手間から解放される。
会計士との遠隔共有
クラウド版なら米国の現地CPAと日本本社が同じ帳簿をリアルタイム共有。メール添付ファイルの差戻しが不要。
現地会計基準への橋渡し
英語・ドルベースでの処理に標準対応。米国基準での帳簿を維持しつつ、日本本社への報告資料にも再利用しやすい。

このように、QuickBooksは単なる会計ソフトではなく、米国での経営基盤を支える重要なビジネスインフラといえるでしょう。

2. QuickBooksでできること:主な機能紹介

(1)売上・請求管理

QuickBooksの中心的な機能のひとつが、売上や請求に関する管理です。見積書の作成から請求書の発行、入金の記録、未回収金の確認までを一貫して行うことができ、営業担当と経理担当の間でデータを共有しやすく、売上管理が格段に効率化されます。

見積書・請求書・領収書の作成

顧客情報と商品・サービスの情報をあらかじめ登録しておくことで、ワンクリックで見積書(Estimate)や請求書(Invoice)を作成できます。テンプレートも豊富で、自社ロゴの追加や支払条件(Due Date、Payment Terms)の設定も可能です。発行した請求書はそのままメール送信でき、送信状況(開封済み/未開封)も確認できるため、紙の郵送作業から解放されます。

※掲載している画面は QuickBooks® の操作イメージです。説明目的で掲載しており、表示されている会社名・顧客名・金額・日付その他の内容はサンプルまたは一部編集済みです。

入金管理と未収金のトラッキング

請求書に対して入金があった場合、QuickBooks上で「Received Payment」として処理します。銀行口座やクレジットカードを連携していれば、入金データが自動で取り込まれ、該当する請求書に自動でマッチングされるため、手作業による照合作業が大幅に減ります。また、未回収の請求書を一覧で確認でき、期限が過ぎたものは自動でリマインダーを送る設定も可能です。これにより、キャッシュフロー管理の精度 が高まります。

※掲載している画面は QuickBooks® の操作イメージです。説明目的で掲載しており、表示されている会社名・顧客名・金額・日付その他の内容はサンプルまたは一部編集済みです。

オンライン決済との連携

QuickBooksはStripe、PayPal、Squareなどのオンライン決済サービスと連携しており、顧客が請求書上のリンクから直接クレジットカードやACHで支払うこともできます。支払い完了と同時に自動で入金処理が行われ、帳簿にも反映されるため、経理側の負担を軽減できます。

販売データの分析

売上データがリアルタイムで蓄積され、月次・顧客別・商品別などで売上を分析できます。「どの顧客からの売上が多いか」「どの商品が最も利益を生んでいるか」といった、経営判断に直結するデータを手軽に得られる点も強みです。

※掲載している画面は QuickBooks® の操作イメージです。説明目的で掲載しており、表示されている会社名・顧客名・金額・日付その他の内容はサンプルまたは一部編集済みです。

(2)経費管理(Expenses & Bills)

QuickBooksのもう一つの強力な機能が、経費の自動管理です。日々の支出を正確に記録し勘定科目に分類することで、月次・年次の損益計算書を正確に作成できます。Excelでの手入力管理から解放され、会計処理のスピードと正確性が大幅に向上します。

銀行口座・クレジットカードとの自動連携(Bank Feed)

主要な米国銀行やクレジットカード会社と直接連携でき、一度接続設定を行うと取引データが毎日自動同期されます。たとえば「オンラインサイトAでの購入」「B航空のフライト」「オフィス用品店Cでの文具購入」などが自動で一覧表示され、勘定科目(Expense Category)候補が提案されます。これにより、領収書の転記ミスや入力漏れが防止され、経費記録の精度が格段に向上します。

※掲載している画面は QuickBooks® の操作イメージです。説明目的で掲載しており、表示されている会社名・顧客名・金額・日付その他の内容はサンプルまたは一部編集済みです。

領収書のアップロードとOCR機能

出張時のホテル領収書や飲食費のレシートは、スマートフォンアプリで撮影してアップロードするだけでOKです。画像データから日付・金額・支払先が自動的に読み取られ、既存の取引データと照合されます。これにより、紙の領収書をまとめて処理する時間を大幅に削減できます。クラウド上で領収書画像を保管できるため、税務調査時の証拠資料としても活用できます。

経費の自動分類とルール設定(Bank Rules)

同じような取引が繰り返し発生する場合、QuickBooksでは「自動仕訳ルール(Bank Rules)」を設定できます。

取引先の例 自動で振り分ける勘定科目
Verizon Utilities(通信費)
Shell Gas Auto Expense(車両費)
Office Depot Office Supplies(事務用品)

ルールを一度設定しておけば、以後は自動で処理されるため、経費処理のスピードが格段に向上します。

※掲載している画面は QuickBooks® の操作イメージです。説明目的で掲載しており、表示されている会社名・顧客名・金額・日付その他の内容はサンプルまたは一部編集済みです。

キャッシュとクレジットの管理統合

現金支出・デビットカード・クレジットカードなどすべての支払い手段を一元管理できます。月次の支出サマリーを確認することで、どの経費項目にどれだけコストがかかっているかを可視化でき、コスト削減の検討にも役立ちます。

(3)給与・人件費管理(Payroll機能)

QuickBooksには、従業員や外部スタッフへの支払いを自動化できるPayroll(ペイロール)機能が備わっています。給与計算・税金の控除・レポート作成・フォーム提出までをワンストップで行えるため、人件費処理にかかる手間を大幅に削減できます。

給与計算と支払いの自動化

従業員ごとに給与額や支払スケジュール(bi-weekly/monthlyなど)を登録しておくと、給与日になるたびに自動で金額を計算し、銀行振込(Direct Deposit)での支払いまで完結できます。控除すべき税金(Federal/State Income Tax、Social Security、Medicareなど)も自動計算されるため、複雑な手計算は不要です。

源泉徴収税・雇用税の自動計算と納付サポート

Payrollは連邦・州の税率表と自動連携しており、各給与からの源泉徴収額(withholding tax)を正確に算出します。給与支払い後には税金納付のスケジュールを自動作成し、期限が近づくとリマインダーを通知します。上位プランでは IRSおよび州税務当局への税金納付と申告(e-filing)を自動代行 することも可能で、税率変更や期限ミスによるペナルティリスクを軽減できます。

W-2および1099フォームの自動作成

米国では、正社員(Employee)と業務委託(Contractor)で報告形式が異なります。QuickBooks Payrollを利用すれば、W-2フォーム(従業員の年間給与報告)1099フォーム(外部業者・個人請負への支払報告)を自動で作成・配布できます。フォームは電子的に税務当局へ提出することも可能で、毎年の年末処理がスムーズに行えます。

時間管理と連携機能

Time Tracking機能と連携可能で、従業員がスマートフォンアプリで打刻した勤務時間を給与計算に自動反映させることで、正確な支払いと透明性の高い勤怠管理を実現できます。Contractorへの支払い管理機能を使えば、請求書→支払い→1099作成までを一連の流れで処理でき、フリーランス契約が多い業種でも効率的に運用できます。

(4)財務レポート

QuickBooksの魅力のひとつは、日々の取引入力が自動的に蓄積され、リアルタイムで財務状況を可視化できる点にあります。帳簿付けのためのツールではなく、経営判断に活かす「ビジネスダッシュボード」として活用できることが、QuickBooksの大きな特徴です。

主要なレポート機能

あらかじめ多くのレポートテンプレートが用意されており、数クリックで最新の経営数値を確認できます。代表的なものは次のとおりです。

レポート名 主な用途
Profit and Loss(損益計算書) 売上・売上原価・経費・純利益を自動集計。月次や四半期の業績確認に。
Balance Sheet(貸借対照表) 資産・負債・資本のバランスを可視化。期末の財務状態を把握。
Cash Flow Statement(キャッシュフロー計算書) 収入と支出の動きを把握し、資金繰りの健全性を確認。
A/R Aging Summary(売掛金管理) 顧客別の入金状況を確認し、滞留債権を早期に発見。
Expense by Vendor(仕入先別経費レポート) 支出の多い取引先を特定し、コスト削減・交渉材料に活用。

これらのレポートはすべてワンクリックでExcelやPDFへ出力でき、社内会議資料としてもそのまま利用できます。

カスタムレポートと比較分析

標準レポートに加え、自社のニーズに合わせたカスタムレポートを作成することも可能です。たとえば「特定プロジェクト別の収益」「地域別の売上」「特定期間のコスト推移」など、条件を設定して柔軟に分析できます。期間比較(今月 vs 先月/今年 vs 昨年)もワンクリックで表示でき、業績トレンドを直感的に把握できます。

ダッシュボードでのリアルタイム把握

ホーム画面には、売上・経費・利益・キャッシュ残高などが一目で分かるダッシュボードが用意されています。グラフやチャートで視覚的に表示されるため、経営者や管理者が毎日確認する「経営の健康診断」としても最適です。さらに、銀行口座と同期している場合は、実際の残高と帳簿上の残高の差異をリアルタイムでチェックでき、資金ショートや入金遅延などのリスクを早期に発見できます。

※掲載している画面は QuickBooks® の操作イメージです。説明目的で掲載しており、表示されている会社名・顧客名・金額・日付その他の内容はサンプルまたは一部編集済みです。

3. まとめ:数字に強い経営を、QuickBooksから

QuickBooksは、請求・経費・給与・レポートなどの会計業務を一元的に管理できるクラウド会計ソフトです。初期設定を適切に行い、日々の取引を正しく記録していくことで、経理業務の効率化だけでなく、経営判断に役立つ財務情報をタイムリーに把握しやすくなります。

米国でビジネスを成長させていくうえで、経理を整えることは、単なる事務作業ではなく経営の土台づくりでもあります。QuickBooksは、その基盤を支える実務的なツールのひとつです。

本稿では主な機能のみを紹介しましたが、QuickBooksには他にも在庫管理、プロジェクト別収益分析、予算管理、アプリ連携など、ここでは紹介しきれない多くの便利な機能 が備わっています。
使いこなすほどに業務効率と経営の透明性が高まり、ビジネスの成長を力強く支えてくれるツールです。

一方で、導入時には会計年度や勘定科目、税務設定など、初期設定で迷う場面も少なくありません。QuickBooksの導入や運用にご不安がある場合は、ぜひUnivis Americaまでご相談ください。
Univis Americaは、日本語と英語、そして会計実務と現場運用の橋渡し役として、貴社のQuickBooks導入・運用をサポートいたします。

Part 2では「QuickBooks Onlineを用いたInventory Management」をお届け!
実際にQuickBooksを導入する際の初期設定・勘定科目の組み方・よくあるつまずきポイントを、日系企業のケースに沿って解説。ぜひあわせてお読みください。
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監修者

小林 賢介

早稲田大学政治経済学部を卒業後、 有限責任監査法人トーマツのグローバルサービスグループ部門に入所。 2015年8月よりDeloitte NYに駐在。 その後、ニューヨークにて UNIVIS AMERICA LLC(Univis US)を立ち上げ、同所長に就任。